卒論

 

2,ゲノム編集の研究

ゲノム編集はその汎用性の高さから、様々な研究が行われている。これからほんの一部であるがゲノム編集を使用した研究の内容を見ていく。

〈1〉遺伝子ドライブ

遺伝子ドライブとは、特に生存に有利な特徴を与えるわけではないのに50%を上回る確率で子に受け継がれる遺伝子が、世代を重ねるに従って、野生集団の中で連鎖的に広がっていく自然現象のことである。この遺伝子ドライブを人工的に引き起こし特定の形質を効率的かつ確実に野生集団に広めようとする研究が行われている。現在ある研究チームはマラリアやデング熱など、蚊をはじめとする昆虫が媒介する病気を根絶する研究が行っている。研究チームによると、蚊の野生集団にマラリアを感染させる寄生虫への抵抗力を持たせる遺伝子をゲノム編集で導入し、遺伝子ドライブさせたところ99,5%の効率で伝わった。現在はまだ閉鎖空間で行われている。しかし、この研究が実用化されれば、蚊の媒介によるマライアやデング熱による死を防ぐことができ、何万人もの人を救うことができる。

〈2〉家畜の品種改良

家畜では、ウシ、ブタ、ヒツジなどについて、1頭当たりの肉の収穫量を増やすことを目的として、筋肉形成を抑制する遺伝子(以下MSTN遺伝子)を破壊させる研究が目立っている。従来から、ウシなどを繁殖中に、たまたまこのMSTN遺伝子に変異が生じると筋肉隆々となるウシが生まれてくることが知られていた。こうした変異体をゲノム編集を用いて再現することで、肉の収穫量を増やすことができる。また、ウシを飼育する際、角が伸びて他の動物や飼育者を傷つけてしまう場合がある。通常、これを防ぐため角を切除するがこの行為は飼育者にとって大きな負担であるだけでなく、ウシに大きな苦痛を与える。そこで、ゲノム編集を用いることで、角が成長しないウシを作る研究もされている。この研究は角切りの手間や動物愛護を考えて行ったものであると論文で説明されている。

このような研究成果が広まっている様子をみると、ゲノム編集は今後、様々な分野において技術革新の大きな柱の1つとなりそうだと感じる。一方で、ゲノム編集で遺伝子を操作されたものを野生に放つことは安全面に懸念がある。また、そもそも遺伝子操作すること自体に倫理的に嫌悪感をもつ人もいる。このような技術を実用化に向け政府はどのような対応をしているのか次章では各省庁の対応を見ていく。

 

 

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