【書評】お金2.0~新しい経済のルールと生き方~

本書は現代のテクノロジーの進化によって発展を遂げる「ポスト資本主義」を念頭に、現在の経済やお金の起源、メカニズムを紹介し、それらがテクノロジーによってどのように変化していっているのかを扱ったものである。ビットコインなど技術的な最新トレンドを紹介したものでなければ、世の中の未来予測を示したものでもない。「お金・経済とは何なのか」を追求し、お金や経済を「ツール」として使いこなすための『本質』を紹介した一冊。
第1章「お金の正体」において起源やメカニズムを紹介する中で「自然摂理の大原則」をローカル化したものとして扱い、第2章「テクノロジーが変えるお金のカタチ」ではFinTechやシェアリングエコノミーを例に「分散化」について言及。本書の核となる第3章「価値主義とは何か?」では「ポスト資本主義=価値主義」とおき、お金の相対的価値の低下を示唆。第4章「お金から解放される生き方」、第5章「加速する人類の進化」において、これからの時代は本質的な価値が台頭し「お金」は単なる道具であると結論付け締めている。以上が本書の構成である。
この先キャッシュレス化に関する論文を執筆するにあたり、一度足を止め、そもそも「なぜ『経済』が発展してきたか」という基本を振り返るいい機会となった。「経済とは欲望のネットワークである」という著者の言い分にはとても理解ができた。モノを買いたい・美味しいものが食べたいといった欲望は常にお金が解決してくれる。しかし現代、このような生物的欲求とは別に社会的欲求が高まっているという。承認欲求である。この世の中のニーズ(欲求)に対応して変化してきたものが即ち経済であるとするならば、私たちは今の経済の変革に立ち会うことになるであろう。ただ一方で、何も気づかずに変革期を歩むかもしれない。普段ごく当たり前に経済ネットワークに依拠する私たちであり、近すぎる存在であるがゆえに見落としてしまうからである。変化を捉えるには常に物事を観察し、俯瞰的に見る目を養わなければならないと本書を通じて再確認した。そしてその中で新たな発見ができれば、自身の価値観に影響を与え、自分自身の成長につながることになるだろう。(900字)

お金2.0~新しい経済のルールと生き方~
著者:佐藤 航陽FACBB26C-2D49-4A94-936D-0EB526E85E11
2017年11月 幻冬舎(株)

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