志の共有が自社らしさ守る

労務行政研究所が2016年に実施した調査によると、経営理念を策定している日本企業の比率は約9割にのぼる。経営理念に加えて、「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」、「パーパス」、「ウェイ」や「クレド(信条という意味)」などを明文化し、公表する企業も数多い。これらはすべて、企業としての「志」を明文化したものだ。

企業の志が対外的に表明されていても、それらがその企業の社員に浸透しているとは限らない。特に新卒中心の正社員採用をしている企業には、他社経験のない社員が多く、自社流の考え方や仕事の進め方が暗黙知の「当たり前」として社内で共有されているため、わざわざ形式知化する必要性が薄い。

しかし、中途採用など入社経緯の多様化により、他社のカラーに既に染まっている人材を受け入れることが常態化するにつれて、志を意図的に共有する努力を怠れば、徐々に自社らしさが失われてしまうことになりかねない。様々な働きかけを行い、組織風土を意図的に創り込む努力が必要だ。そうすることで、自社らしさに共感する働き手から積極的に選ばれる企業に進化できるだろう。

 

働き手に選ばれる企業人事(15)三菱UFJリサーチ&コンサルティングプリンシパル石黒太郎氏(戦略フォーサイト)

2022/01/26 日経産業新聞 14ページ 1333文字

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