書評「HUMAN+MACHINE 人間+マシン AI時代の8つの融合スキル」

本書はアクセンチュア社最高技術責任者でありながら、長年においてAIの研究に携わってきた著者がAIを業務の自動化だけでなく、協働することで、業務プロセスやビジネスモデルの進化につなげている企業の事例に加え、具体的な変革のためのフレームワークや必要となる8つの「融合スキル」とは何なのか8章にまとめて述べたものである。

第1章『自己認識する工場』では製造、サプライチェーン、流通の観点からこれまでのAIの歴史を振り返り、人間とマシンのチームが工場をいかに変えつつあるかを述べている。人間とマシンがそれぞれ持つ強みがコラボレーションした時、経営陣は業界を一変させるようなイノベーションを起こせると述べている。

第2章『会計業務をするロボット』ではAI技術が情報をフィルタリングして分析することを可能にしているバックオフィスについて、扱いにくいITツールや非効率なプロセスに苦しむ「第三の波」のAIを「第二の波」の自動化と人間の想像力が合わさることで、効率性と成長の両面に対して可能性が開かれると述べている。

第3章『究極のイノベーションマシン』ではR&Dの主要なステップにおいてAI技術が効率化と成果の飛躍的向上をもたらしていることを言い、人間とマシンは補完的立場にあると主張する。また、企業がAIツールを導入することで、研究開発プロセスのあらゆるステップを節約できるとし、製品開発者は物理的なプロトタイプを準備するためのコストや時間を節約できるようになったら、そのコストや時間を革新的なアイデアや製品を追求することに充てなければならないと主張する。

第4章『フロントオフィスにボットがやってくる』ではアップルのSiriや、アマゾンのアレクサのような機械学習技術を例に挙げ、企業のブランドを具現化するAIが大きな成果を上げているマーケティングとセールスの分野に目を向けている。さらに、著者は企業は最初に適切な土台の整備を行わなければ、人間とマシンのコラボレーションから利益を得られないこと、ユーザーインターフェースと顧客体験をデザインする人の存在がAIをベースとした製品やサービスを成功させるキーマンになっていることを主張する。

第5章、第6章では AIが持つ力をフル活用するためには、企業は従業員の新しい役割を検討したり、人間とマシンの新しい共生関係を確立したり、経営に関する従来の概念を変えたり、仕事そのものの概念を一変するなどして、ミッシング・ミドル(金融サービスにアクセスできない中間層)を埋めることの必要性を提言している。

第7章では経営上の課題と経営者の5つの重要な活動について、第8章では仕事そのものの未来と8つの新しい「融合スキル」について考察している。なお、人間とマシンの「共存関係」の世界を「第3の波」として、その波に乗ってきた様々な業界のリーディングカンパニーが採用した原則を「MELDSフレームワーク」として5つに整理し、第7章で最初の「MELD」の4つ、第8章で「S」について深く掘り下げている。

人間とAIのコラボレーションによる革新についてを知りたくて、この本を選んだ。 それについては、AIシステムは人間を置き換えるものではなく人間の能力を高め、これまでに不可能であったレベルの生産性向上まで実現できることよいうこと。人間とマシンの「共存関係」は人間とマシンが協力して、ビジネスにおけるパフォーマンスを桁違いに改善していく(ミッシング・ミドル)ということをこの本から学べた。しかし、人の言語をしゃべるロボットや日に日に賢くなるAIについては、プライバシーや倫理観の問題について気を付けなければいけないと感じた。 今後はAIとの協働意識の国際比較、日本のAI活用の方向性についても調べたい思う。

ポール・R・ドーアティ、H・ジェームズ・ウィルソン著

東洋経済新報社

2018年12月6日発行

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