遺伝子組み換え食品の流通
日本では大豆やトウモロコシ(生食用は国内産だが、飼料用はほとんどアメリカ産)などの穀物の多くを輸入に頼っているため、消費者が遺伝子組み換え作物を拒否したくてもできないという事情がある。日本で開発された遺伝子組み換え作物はまだ試験中で作付けはされていないが、農水省主導でウィルス耐性遺伝子を組み込んだイネの試験的な栽培や、サントリーによる青色の遺伝子を組み込んだカーネーションの栽培などが進行中である。 代表的な遺伝子組み換え作物: ラウンドアップ レディ [大豆] 米モンサント社が開発したラウンドアップレディという大豆は、その名の通りラウンドアップという除草剤に対して抵抗性を持つ大豆である。この大豆にはラウンドアップという除草剤の効果が低いため、高濃度のラウンドアップを1回撒けば雑草を取り除くことができる。 大豆は多くの用途に加工して使用されるため、最終生産物から遺伝子組み換えに関係する遺伝子や酵素が抽出できるかどうかで遺伝子組み換えの表示と非表示が決められている。たとえば、豆腐やみそ、納豆や枝豆は組み換え表示義務がある一方、大豆から取られる油やしょうゆは不純物除去や発酵の過程で組み換えが認められる遺伝子や蛋白質が分解されるので、表示義務がない。 フレーバー セイバー [トマト] フレーバーセイバーはアンチセンス法を用いて果実が熟成するのを阻害し、日持ちをよくしたトマトである。従来のトマトと違い、ちょうど熟す時期を見はからって市場に出すことができるため、食感の向上も見られる。 キリンビールが日持ち向上遺伝子を組み込んだトマト フレーバーセイバー の日本での販売権を取得したが、日本での遺伝子組み換え食品に対する消費者の抵抗感を考慮して本販売には至らなかった。 Bt トウモロコシ このトウモロコシは土壌中に棲むバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringensis: Bt)という細菌が作る殺虫性の蛋白質の遺伝子を組み込んで害虫アワノメイガへの耐性をつけたものであり、殺虫蛋白質を直接使うのとは異なり茎や葉の内部に入り込む害虫に対しても効果があるため、害虫対策として劇的な効果があった。 表示に関しては大豆と同様で、加工品から組み換え遺伝子やその遺伝子が作る酵素が見つかるなら表示義務があるが、組み換え作物が入っていないとされていた商品 とんがりコーン などから、日本のガイドラインで安全でないと判断されていた遺伝子組み換えトウモロコシの遺伝子が発見され、問題となった。 |