日本のバイオ産業に関する考察


 日本のバイオ産業の研究をテーマに、本や新聞、ニュースなどから情報を集め卒業課題の制作に取り組んできました。一年以上取り組んできたので、その本質とはいかないまでも片鱗ぐらいは掴めたかと思います。以下に私なりのバイオ産業に関するまとめ、考察を述べさせていただきます。

未成熟の産業

 日本で本格的にバイオクラスターや関連法案の整備が行われるようになったのは1990年代の半ばごろからで、それよりもずっと以前にアメリカでは技術移転や特許権などに関する法律が施行されており、ちょうどこの位の時期にはバイオベンチャーの興隆が起こっていました。その遅れを取り戻すためにアメリカの法政策を模倣するなどの対応を行っていますが、やはりまだ歴史が浅いのでしょう、目覚しい成果というのは上げられていません。キリンビールなど、一部の大企業が特定の分野においてのみ利益を上げることに成功していますが、その他の中小企業を含め、産業の1分野としてみれば決して良好な市場を形成しているとは言えないと思います。それはITなどの盛況状態にある産業と比較してみれば簡単に分かることでしょう。

 では、日本のバイオ産業には見込みがないのか、というとそうではないと考えています。未成熟というのは完成していないという意味であってこれから先のことを言っているわけではありません。アメリカではバイ・ドール法が制定されたのが1980年のことでバイオ産業か活性化し出したのが1990年位の時期でした。日本でも10年位経過すれば成果が出る、とは一概には言い切れませんが発展にはある程度の時間が必要であるという一例にはなるでしょう。TLO法等、法整備も着々と進んでいて、いくつものバイオ関連クラスターが作られています。バイオテクノロジーは「可能性」の産業だといわれることがあります。まだ、産業の将来像などがはっきり見えたわけではありませんが、可能性は準備できたのではないかと考えています。

可能性に関して:医療関連クラスター

          食品関連クラスター

          装置開発関連クラスター

バイオ産業のこれから

 バイオ産業はこれから益々発展していく産業だということに関しては間違いないと思います。人材、技術、投資など様々な面で問題を抱えてはいますが、政府の法でも戦略大綱をうちだすなどしていますし、時間をかければ解決は可能でしょう。後重要なのは意識の改革ではないでしょうか。政府、企業、民間の全てが明確なビジョンの共有をすることが大切なのだと思います。そういう意味ではスイスのバイオベンチャーの例は1つの理想像を見せてくれたと思います。大学と企業の間に垣根がなく開発と生産・販売が直結する体制、民間人のバイオテクノロジーに関する意識の高さ、これを日本でも実現してほしいと思います。それができればバイオテクノロジーでもITビッグバンのような大きな波を起こせるのではないかと思っています。