現状

アメリカ合衆国では、すでに遺伝子診断は国民に広く認知されています。診断をビジネスとしておこなっているバイオベンチャー企業もあるほどです。新生児の集団検診では毎年400万人が遺伝子異常などを調べるために血液検査を受けています。また、遺伝子診断を受けようと考えている人や、何らかの病気にかかっている、あるいはかかる可能性が高いと診断された人(またはその両親)のために、遺伝子カウンセラーという専門家も数多くいます。

しかし一方で、アメリカでは次のような問題が起きていました。診断結果に対する差別をおそれて、あえて遺伝子診断を受けない人が増えていたのです。「遺伝子診断」は良いところばかりではありません。原因遺伝子を持つと言うことは、持っていない人に比べてその病気にかかりやすいということです。企業の社員採用の際、何か重い疾患にかかる可能性のある人とない人、どちらを採用するでしょうか?仮に能力が同じ場合、言うまでもなく可能性のない人(原因遺伝子を持ってない人)になるでしょう。このような新しい差別を生んでしまう面も「遺伝子診断」にはあるのです。



法規制


このような問題点を抱える遺伝子診断ですが、夢のような技術であることに変わりはありません。遺伝子診断の持つ問題点を重く受け止めた米上院は2005年2月17日、企業の社員採用や、保険加入の際に個人の遺伝情報を判断材料として利用することを禁じた法案を全会一致で可決しました。遺伝子差別に対する法規制です。遺伝子診断先進国であるこのアメリカの法整備は、他の国にも影響を与えるでしょう。