着床前診断は受精卵診断とも呼ばれ、生まれてくる子供の遺伝病の有無などを着床前の受精卵で診断する方法のことを言います。体外受精した受精卵が4〜8個の細胞に分裂した段階で、1、2個の細胞の遺伝子を調べます。そして異常がないと診断された健全な受精卵を子宮に移し妊娠、出産させます。

一方で、「命の選別」だとする倫理的批判も多く、法整備を求める声も高まっています。国内では、神戸市の産婦人科医が着床前診断をおこなった例がありますが、無申請でおこなったため又目的が男女産み分けであったために波紋が広がりました。現在、日本産科婦人科学会では実施は重篤な遺伝病に限るとして審査制度を設けています。
 
学会が承認した例として、2004年7月の慶応大が申請していた筋ジストロフィーを対象とした診断があります。この慶応大の申請は、全身の筋肉が委縮し体を動かすのが困難になるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因遺伝子を妻が持っている夫婦が対象でした。学会倫理委は、子供に遺伝すると成人になる前に日常生活に支障が出たり、生命の危険があるとして、重篤な遺伝病と認定しました。 又、同じように名古屋市立大が申請した筋強直性ジストロフィーの診断は、成人後も日常生活を送ることができる可能性があり、重篤な遺伝病に当たらないとして認めませんでした。