このページでは、遺伝子診断とはどういうものかについて説明します。



遺伝子診断

遺伝子診断とは、一般に疾患や機能異常を引き起こす遺伝子変異の有無を検出するために血液などから採取したDNAを調べることです。現在最も広く使われているのは新生児の集団検診です。アメリカ合衆国では、毎年400万人の新生児が遺伝子の異常や欠損を調べるための血液診断を受けています(道徳科学研究センター・足立智孝氏の論説より引用)。この診断の中には、遺伝子そのものの変異を検出するためのものや、先天性代謝障害(ある酵素遺伝子の変異によって起こる遺伝的疾患)などで見られるような細胞が正常に働くために必要なタンパクの欠損を検出するものがあります。
遺伝子診断には様々な方法があり、染色体全体の異常を検査したり、遺伝子中またはその近辺を含むDNAの短い領域の変異を検査したり、遺伝子の産物であるタンパクの異常を検査したりする方法が主に用いられています。


遺伝子診断の種類

一口に遺伝子診断といっても、いろいろな種類があります。目的別にみれば以下の五つに分類することができます。。第一に、病気の確定診断。第二に、将来の病気を事前に知る発症前診断。第三に、胎児の遺伝子を調べる出生前診断や受精卵の段階で検査する受精卵診断。第四に、保因者であるかどうかを調べる遺伝病の保因者(キャリアー)診断。最後に、病気のかかりやすさを調べるリスク診断です。リスク診断は原因遺伝子の有無だけでなく、ゲノム情報を元に割り出した体質や環境要因が関係する病気も対象となります。心臓病などの生活習慣病がこれに当たります。これは一つの遺伝子変異による病気が親から子へ伝わる、従来の遺伝病の診断とは異なります。


ゲノムと遺伝子

 ここでは理解しやすいように遺伝子診断をその方法により大きく二つに分けることにします。まず一つめは、すでに発見されている疾患の原因となる遺伝子を元に、原因遺伝子を持っているか否かで疾患のかかりやすさ、あるいはすでにかかっているかどうか調べるという方法です。この方法では、未だ原因遺伝子が解明されていない病気などへの応用は利きません。そして二つめとして、前者の方法ではカバーできない病気に関して、ゲノム情報を元に個人の体質を割り出すことで病気のかかりやすさを判断するという方法があります。この方法ではゲノム情報を元に体質を割り出すため、正確には遺伝子診断とは呼べませんが広い意味での遺伝子診断とします。この技術はテーラーメイド医療などに応用されています。