用語集

プリオン

 感染性タンパク因子と呼ばれ、正常な体内に存在する物質である。特に神経細胞に多く含まれており,神経細胞の構造を保ったり神経から神経へ情報を伝達したりするはたらきに携わっていると考えられている。

プリオン病

 異常プリオンタンパクが外から体内に入ってきたり、プリオンを作り出す遺伝子が突然変異することによって起こる病気。代表的なものはクロイツフェルト・ヤコブ病やウシ海綿状脳症(いわゆる狂牛病)がある。

受容体

 細胞や細胞膜に存在し、ホルモンや化学物質などと結合して細胞内に反応を起こすたんぱく質。ダイオキシンはAh受容体(芳香族炭化水素受容体)と結合し、毒性を発揮する。

小胞体

 真核生物の細胞小器官の一つであり、一重の生体膜に囲まれた板状あるいは網状の膜系。核膜の外膜とつながっている。粗面小胞体と滑面小胞体の二種類がある。

バイオエタノール

 産業資源としてのバイオマスの一つ。サトウキビや大麦、トウモロコシなどの植物資源からグルコースなどを発酵させて作られたエタノールのことである。天然ガスや石油などの化石燃料から分離生成されるエチレンを、触媒を介して直接水と反応させ作られた合成エタノールと区別するために呼ぶ。

始原生殖細胞

 精子や卵子の起源細胞。胚発生のごく初期段階で、多能性幹細胞集団であるエピブラスト(原始外胚葉)から分化する。生殖幹細胞とも呼ばれる。

間葉系幹細胞

 間葉系幹細胞とは,胎児にしかない胚性幹細胞と異なり,患者の骨髄から容易に分離することができる。また,軟骨,骨,脂肪,腱,筋肉,神経などへと分化する能力をもっているので,再生医療で用いる移植用細胞としては,最も有望である。

マックスプランク進化人類学研究所

 ドイツのマックスプランク協会が維持・運営するドイツを代表する学術研究機関の1つ。研究機関の総数は78に上がる。マックスプランクは高名な物理学者の名前から付けられた。主な部門は生物・医学分野、 化学・物理学・工学分野、 精神科学・社会学・人間科学分野 の三部門である。

多発性硬化症

 中枢性脱髄疾患の一つで、脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多彩な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患である。中枢性脱髄疾患の中では患者が最も多い。北米、北欧、オーストラリア南部では人口10万人当たり30〜80人ほど罹患しているが、アジアやアフリカでは人口10万人当たり4人以下で、人種によって罹患率に大きな差があることが特徴。

センダイウィルス

 石田名香雄(元東北大学総長)らにより東北大学医学部で発見された。細胞融合を起こすウィルスとしてバイオテクノロジーの分野で重要視されている。最近は、遺伝子治療において、導入する遺伝子を目標組織の細胞に運ぶベクターとして有望視されている。なお、世界的にセンダイウィルスで通じる。

リステリア菌

 哺乳動物・淡水魚類・下水・河川水等の自然界に広く分布し、自然界での抵抗力が強く、低温発育生・食塩耐熱性・低pHでの生育・発育性など食品衛生上色々と問題となる菌。さまざまな食品があらゆる環境から汚染される可能性があるが、特に乳製品及び食肉加工品に多く検出される。妊婦・乳幼児・高齢者等の免疫力の低下した人(病原性は弱い)に発症する場合が多く、死亡率も高い。感染すると特に髄膜炎、敗血症、髄膜脳炎などを引き起こす

バクテリオファージ

 細菌に感染するウィルスの総称。タンパク質の外殻に遺伝情報を担う核酸 (主に二本鎖DNA) を持っている。感染し増殖すると細菌は溶菌という現象を起こし死ぬ。この現象によってまるで細菌が食べ尽くされるかのように消えてしまうため、これにちなんで「細菌(bacteria)を食べる(ラテン語のphagos)もの」を表す「バクテリオファージ(bacteriophage)」と言う名が付けられた。

ディスレクシア

 学習障害の一種で、失読症、難読症、識字障害、読字障害ともいう。特に幼少期に見られる。知的能力及び一般的な学習能力の脳内プロセスに特に異常が無いにも関わらず、書かれた文字を読むことが出来ない、読めてもその意味がわからないといった症状がでる。トム・クルーズやオーランド・ブルームがディスレクシアを抱えていたことを告白している。アインシュタインもディスレクシアであったといわれている。

カロリンスカ研究所

 スウェーデンのストックホルムにある世界最大の医科大学。ノーベル賞生理学医学部門の選考委員会がある。

滑膜肉腫

 滑膜とは関節の内側をおおっている膜様の組織で、関節液を産生したり、異物を取り込んだりして関節軟骨を保護している。滑膜肉腫の組織を顕微鏡で見ると、この滑膜によく似ているため、この名称がつけられた。しかし、滑膜肉腫は関節のなかにできることは極めてまれ。滑膜肉腫は比較的若い人の手や足、または膝などの関節の近くに発生し、痛みを伴ったり、腫瘍の内部に石灰化が起きることもある特徴的な腫瘍。悪性腫瘍でありながら何年も大きさが変化せず、転移も生じなかった例もある。しかし、一般的には極めて悪性度が高く、5年生存率は50%以下といわれている。

リボゾーム

 あらゆる生物の細胞内に存在する構造であり、mRNAの遺伝情報を読み取ってタンパク質へと変換する機構である翻訳が行われる場。大小2つのサブユニットから成り、これらは蛋白質とRNAの複合体である。細胞小器官に分類される場合もある。X線構造解析により立体構造が決定された。

間質性肺炎

肺の間質組織を主座とした炎症を来す疾患の総称で、非常に致命的であると同時に治療も困難な難病である。進行して炎症組織が線維化したものは肺線維症と呼ばれる。原因は薬剤性のほか、ウィルスによる感染、放射線、突発性などがある。美空ひばりはこの病気で命を落とした。

スティーブンス・ジョンソン症候群

全身麻酔薬や抗生物質、解熱鎮痛剤、利尿剤、降圧剤、抗てんかん薬などを服用後、皮膚が焼け爛れ、失明するなどの激烈な症状が発生する。年間人口100万人あたり1人から6人が発症する。市販薬(大衆薬)が原因と疑われた例も5%ほどある。発症のメカニズムが不明のため対策が立てにくいという特徴がある。

横紋筋融解症

骨格筋細胞の融解や壊死により、筋細胞成分(ミオグロビン)が血液中に流出した病態。代表的な症状として、筋肉が痛い、手足に力がはいらない、赤褐色の尿がでるなどがある。

アスピリン喘息

アスピリンに代表される酸性非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)・解熱鎮痛薬によって発作が誘発される喘息。アスピリン喘息といわれるが、アスピリンだけが原因物質ではない。たまたまアスピリンが原因になることで発見されたことと、他に適切な呼び名が無い事から、現在でもアスピリン喘息と呼ばれている。正確には非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作。

クローン病

 消化管全域に、非連続性の炎症および潰瘍を起こす原因不明の疾患。潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患 (IBD : Inflammatory bowel disease)に分類される。日本国内には約2万人の患者がいる。1932年に米国の内科医ブリル・バーナード・クローンらによって限局性回腸炎として報告され、後に病名を改められた。

ニパウィルス

 1998年から1999年にかけてマレーシアで発生し、1999年に新ウィルスとして同定された。発生地域のニパ(Nipah)にちなんでニパウイルスと命名されている。リボ核酸(RNA)のみをもち、脳炎症状などを引き起こす死亡率の高いウィルス。本来の宿主はオオコウモリであると考えられ、豚などを介して人に感染する。

人工合成が可能になった主なウィルス

 1978年 RNAウイルスで初めて成功

   85年 ポリオ

   94年 狂犬病 

   95年 麻疹、水疱性口内炎 

   97年 牛疫

   99年 インフルエンザ

 2000年 ムンプス(おたふく風邪)

   06年 マールブルグ、ニパ