人材の確保、スピンオフツリー
参照:日経バイオビジネス2004/12等
バイオ産業に関する施策整備が米国に20年近く遅れてしまった日本が、その遅れを取り戻すためにはバイオベンチャーの起業や中小企業への技術移転を活性化させる必要がある。文部科学省科学技術政策研究所の斉藤尚樹総括上席研究間はバイオ産業活性化の鍵は「人材育成」と「スピンオフツリー」の2つだと語る。
リーダーの育成
1つ目の人材については、特にクラスターを引っ張っていく人材(リーダー)の不足が指摘されている。ここでいうリーダーとは、クラスターの戦略を練り、関係者を率いていく存在のこと。米シリコンバレーを始め、海外で大きく発展してきたクラスターには必ず優れたリーダーの存在があった。広い視点で戦略を練っていく求心力がクラスターには必要不可欠だという。研究者や企業が集まってくるとハブの役割を果たす人材が重要となる。そういった専門人材をどれだけ確保できるかがクラスターにとっての生命線といえるかもしれない。今後は人材育成や、人材を確保するための枠組みの整備にも力を入れていく必要がありそうだ。ちなみに大阪ではNPOバイオビジネス・ステーションが設立され、早くから人材育成に取り組んでいる。
スピンオフツリー
もう一つの鍵となるスピンオフツリーとは、ある特定の技術、あるいは企業から、研究成果や事業が発展して次々とスピンアウトするように技術や組織ができる様をいう。それにはクラスターの方向性を定めることで、何か一つアピールできるような成果を挙げることが重要となる。実際クラスターの関係者の中には、分野の絞込みが必要と考える人間は少なくない。ではどうやって戦略的に分野の集中を行うか。クラスターの中には既に動き始めているところもある。
1つは、地場産業を生かそうという戦略だ。例えば徳島では、パソコン用ソフトの大手のジャストシステムが県内にあることから、スピンアウトしたプログラマーも多い。この人材をうまく教育し、インフォマティクスとバイオを結びつけるのに最適なクラスターにしていこうという考えである。金沢では、代替医療に強みを持ち、機能性化粧品の評価体制構築を進める。ナノテククラスターである京都では、地場産業の新しいニーズを汲み取り、逆に研究者側にテーマを配分しようと試みている。
もう一つの戦略は、誘致した大型研究機関をさらに活用することだ。その例が横浜にある。誘致した理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの免疫・アレルギー分野の研究成果を生かしていくため、トランスレーショナルリサーチセンターを2007年にも築いていく考えである。