国内初のクローン豚 〈8/16/2000〉

豚の胎児の体細胞を使って,この細胞と遺伝的に同じ体細胞クロー ン豚を出産させることに

国内で初めて成功した,と農水省畜産試験場(茨城県茎崎町)が2000年8月16日,発表した。


世界では2000年3月に英国のバイオ企業が報告したのに次ぐ2例目。試験場は,遺伝子を操作

し, 人間に移植できる豚の臓器作りの研究などへの応用を期待している。 18日発行の米科学

誌サイエンスに掲載される。クローン豚をつくったのは,試験場育種部の大西彰主任研究官や

米 ロックフェラー大などのチーム。


《朝日新聞2000年8月17日より引用》



中国産の黒豚の胎児(メス)の線維 芽細胞から遺伝情報がつまった核を採取,あらかじめ核を除いた

白豚の卵子に注入し,電気処理する方法で110個の胚を作製。

代理母の白豚 4匹に戻した。1匹が妊娠し,7月2日にメスの子豚1頭が生まれた。子豚は黒豚で,核を

提供した胎児の細胞とも遺伝子も一致していた。現在順調に発育しているという。  


体細胞クローン作りは羊や牛,ヤギ,マウスで成功している。豚は 臓器のサイズが人間に近

く,この技術を応用して人間に臓器を移植で きるよう遺伝子操作をした豚の生産が期待されて

いる。ところが,豚 は卵子の体外培養が難しいことなどから難航していた。  

大西さんらは,クローン豚が人間への異種移植(ゼノトランスプラ ント)の研究につながる期待を込め,「ゼナ」と名付けた。

一方,米国の研究者らが,豚のすい臓の細胞を免疫のないマウスに 移植したところ,豚に潜伏しているある種のウイルスが種

を超えて感染することを示した研究を24日発行の英科学誌ネイチャーに発表する。 こうしたことから,米国のバイオ企業が,遺伝子操

作したクローン豚 作りの研究の中止を決めたと報じられている。