【止まらない、自治体の遺伝子組み換え作物規制】


2005 / 05 日経バイオビジネス

・懲役刑定める道条例が可決 / 理解進まぬ悪循環を加速

遺伝子組み換え作物(GMO)の栽培を規制する北海道条例が可決。無許可栽培には懲役刑を科す。

問題先送りの規制が相次ぐことで、「GMO=悪」というイメージは増幅する一方だ。


「遺伝子組み換え作物(GMO)が周辺の一般作物と交雑し、その地域の作物の不買運動に発展するかもしれない。」という風評被害への不安から、遺伝子組み換え作物の栽培を規制する自治体が近年増えている。

その中でも、北海道の規制が特に注目されるのは、ガイドラインではなく、条例として初めて規制を明文化したことだ。そして条例にすることで、他の自治体のガイドラインとは違い、明確な罰則を設けたことだ。

一般の農家が道に無許可でGMOを栽培したり虚偽の申告をするなど、条例に違反した場合には「懲役1年以内または罰金50万円以下」という刑事罰を科すことになった。

研究栽培についても条例違反に対しては「50万円以下の罰金」。懲役はつかないものの、やはり刑事罰は適用される。

刑事罰の設定について道農政部の道産食品安全室は、「危険なものの栽培を取り締まるという意味ではなく、生産や流通の混乱を招きかねない行為に対するもの」と説明している。

農林水産省も「交雑や混入の防止に力点を置いており、国が承認した品種の安全性を否定しているわけではない。国の方針と対立するものではない」と説明する。


ルールの実効性を確保するにはなんらかの罰則が必要という理屈は分かるが、「国が安全性を承認している作物を栽培して懲役」という内容には、行き過ぎという感は否めない。

結局、自治体の規制にしても国の制度の枠組みにしても、日本でGMOの一般栽培が行われることを想定したものにはなっていないといえる。規制の対象となるのは、研究栽培と一部の先進的な農家だけなので、GMOと一般作物の共存を意識したルール作りは先送りされているのが現状だ。

一般の市民や農家に対して、GMOの正しい理解を促すような制度をつくっていくことが今後の課題だといえるだろう。

※共存策・・・デンマークでは政府とGMO生産者が出資で、補償基金の設立、GMO生産のライセンス制度などを打ち出している。


・GMOの栽培を規制する主な自治体


策定日 名称 対象
農林水産省
2004年2月24日 第1種使用規程承認組み換え作物栽培実験指針 農水省所管の研究施設
における研究栽培
茨城県 2004年3月4日 遺伝子組み換え農作物の栽培に係わる方針 一般栽培
滋賀県 2004年8月20日 遺伝子組み換え作物の栽培に関する滋賀県指針 一般圃場における
食用作物の栽培
岩手県 2004年9月14日 遺伝子組み換え食用作物の栽培規制に関するガイドライン 一般圃場における
食用作物の栽培
北海道 2004年3月5日 北海道における遺伝子組み換え作物の栽培
に関するガイドライン
一般栽培
北海道 2006年1月1日 北海道遺伝子組み換え作物の
栽培等による交雑等の防止に関する条例
一般栽培
および研究栽培