【遺伝子組み換え(GM)「不使用」表示】


(参考:日経バイオビジネス 2005年 11月号)


・「GM不使用」表示が消費者理解を妨げる原因

 「遺伝子組み換え(GM)食品不使用」の表示は「混入率はゼロ」 のことだと誤認している消費者が90.7%に及ぶことが、バイテク情報普及会の消費者調査で明らかになった。法律上5%未満ならGM不使用とみなされ、任意で 「不使用」と強調表示できることが、消費者に優良誤認を与える原因 となっている。

 国内のGM食品表示は2001年にJAS法(農林物資の規格化および品質表示の適正化に関する法律)で規定された。表示対象となる30品目の食品のうち、主原料にGM原料を使っている場合は「使用」、使用が分からない場合は「不分別」の表示が義務付けられている。対して「不使用」表示は任意表示となっている。また、分別管理(IPハンドリング)に努めても「意図せざる混入」が避けられないとして、日本では5%までの混入は「不使用」と見なし、表示しなくてもよいことになっている。

 つまり、「不使用」と表示された食品には、5%までのレベルでGM原料が含まれている可能性があることになる。にもかかわらず、多くの消費者は「GM不使用表示の食品におけるGM原料の混入率がゼロ」と信じているのが現状だ。また同時に、内容が同じであるはずの表示なしの食品に対しては、75.4%の人が「GM原料が使用されていると思う」と答えている。

また、不使用表示は表示なしに比べて、「より安全性が高い」(85.4%)、「より品質が優れている」(74.0%)と考えていることも明らかになった。表示制度開始から4年、内容を誤解している消費者が大多数であることが浮き彫りになったといえる。海外では、多くの国が消費者を惑わすとして、「不使用」表示を禁止している。)

 JAS法のGM表示規定は、商品選択の指標を求める消費者団体からの強い要望を受けてできたものだった。ところが実態は、「使用」「不分別」表示の食品はごく一部で販売されているにすぎない。大半が「不使用」表示であり、それと内容が同じ”表示なし”との間に明らかな優良誤認が生じているといえる。


【各国の遺伝子組み換え表示規制】

  表示の目的 表示対象 「意図せざる混入」の上限         「不使用」と表示できる条件     
日本 消費者の商品選択のための情報提供 表示対象品目であり、組み換えDNAやたんぱく質が残存するもの。組み換え原料が主な原材料であるもの。

5%
IPハンドリングの実施を前提に閾値5%
アメリカ バイオ技術による原材料が使用されているかどうか、任意に表示したいというメーカーを助けるため 組成、栄養素が著しく変化したもののみ
-
虚偽でなく、誤解を与えないことの立証を確実にする(評価、試験、書類発行、記録作成)などが条件
カナダ バイオ技術による原材料が使用されているかどうか、任意に表示したいというメーカーを助けるため 組成、栄養素が著しく変化したもののみ
-
検討中
EU 消費者の商品選択のための情報提供 組み換えDNAやたんぱく質が残存しないもの。(飼料も含む)
0.9%
定義なし。原則使わない
南アフリカ共和国 消費者の商品選択のための情報提供 法律により許可されているGM食品のみ
1%
IPシステムが国の承認した認証機関に確認証明されていること
オーストラリア・             

ニュージーランド

消費者の商品選択のための情報提供 改変されたDNA,あるいはたんぱく質を含むすべての食品
1%
表示が虚偽でなく、あるいは消費者の誤解を招いたり、欺瞞とするものでないことを証明する。
タイ 消費者への情報提供 表示対象品目であり、組み換えDNAやたんぱく質が残存するもの。組み換え原料が主な原材料であるもの。

5%
「不使用」表示は禁止
韓国 消費者の知る権利、選ぶ権利を保障 組み換えDNAやたんぱく質が残存するもの
3%
「不使用」表示は禁止
台湾 消費者の商品選択のための情報提供 表示対象品目であり、組み換えDNAやたんぱく質が残存するもの。組み換え原料が主な原材料であるもの。

5%
IPハンドリングの実施を前提に閾値5%

出典:食品産業センター平成15年「諸外国の遺伝子組み換え食品等に対する表示制度調査」


※バイオベンチャー企業 「A-Hit Bio (札幌市、池田順子社長)」が日本で唯一、GM「使用」と表示する納豆「Dr.富ちゃんの納豆のススメ」を製造し通信販売を手がけている。また、最近ではイオングループや一部の生協が、サラダ油などの調味料に「不分別」表示を行っている。