【種苗法の侵害


種苗法の侵害とは

種苗法における育成者権は、他の知的財産権と同様に、アジアなどにおける海賊版農産物が大きな問題になっている。

たとえば、日本国内で開発された新品種が、中国や韓国などで無断で栽培され、日本に逆輸入される事件があった。このようなことは、農業関係者の長い間の努力を無にする行為であって、日本の付加価値の高い産業の力を弱めることになる。

このため、農林水産省生産局をはじめ、政府各機関では、育成者権の侵害対策強化に乗り出している。

種苗法に基づく育成者権は、知的財産権(あるいは無体財産権)に含まれる諸権利のひとつであり、今後の日本の知的財産を保護する上で重要な役割を期待される工業所有権や産業財産権の一つの領域になっていくものと考えられる。


海外違法流出 - 事例

北海道が育成したいんげん豆「雪手亡」 平成13年に輸入された中国産インゲン豆が「雪手亡」であることが判明
栃木県が育成したいちご「とちおとめ」 平成13年、14年に東京都卸売市場で韓国産「とちおとめ」の取扱われているとの情報があったが、詳細は不明
大分県臼杵市の農家が育成したかんきつ品種 平成12年、育成したかんきつ品種の穂木を県外の農家が無断で韓国済州島へ持ち出す
奈良県が育成したいちご品種「アスカルビー」 利用許諾を結んでいた種苗協会の会員が、低コスト苗増殖を目的に、韓国や中国へ違法に持ち出す


・日本製イチゴ新品種の無断栽培問題

日本製イチゴ新品種の無断栽培問題とは、日本で新開発されたイチゴ新品種が韓国で無断で栽培されている問題である。

2005年、韓国でのイチゴ生産は、日本で開発されたレッドパール、章姫などといった品種が大部分を占めている。これらの品種は国際植物新品種保護連盟(UPOV)により知的財産の概念が導入されており、栽培を行う際には品種を開発した者に対して栽培料を支払うこととなっている。しかしながら、韓国は日本に対する栽培料の支払いを行なってこなかった。

2007年からは韓国内生産者と開発者との間で栽培料に関する議論が開始され、2008年以降は日本に対しても栽培料の支払いが行われる予定である。

 ※ 韓国内ではイギリス品種のイチゴも生産されているが、イギリスに対しては栽培料を支払っている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


・育種会社による輸出許可証

2005年4月に 中国産カーネーション切花の日本への輸入品に「輸出許可証」を貼り付けることを、カーネーション育種会社6社が、呼びかけた。

(Hilverda Plant technology / Selecta Klamm GmbH & Co KG / Barberet & Blan S.A / P.KOOIJ & ZONEN B.V / Fuji-Plants / Miyoshi Co.,Ltd)

近年 大量のカーネーション切花が、中国から日本市場に輸入されている。しかしながら、これらの中には、育種会社から正規の許諾を得ずに無断で苗を増殖し、生産された当該切花が含まれている状況にある。

中国国内で無断に苗の増殖・生産が行われたカーネーション切花が日本に輸出された場合、切花を輸入した日本の業者は、育種会社の日本における知的財産権(育成者件、商標権など)を侵害している可能性が高く、育種会社より差し止め請求などを受けたり、日本の法律で罰せられることがある。また、日本の税関においても、当該切花の輸入を制限する手続きがとられる可能性がある。

これでは育種会社が正規にライセンス契約並びにカーネーション生産契約を締結する中国の生産者・輸出者が、日本の輸入業者と公正に取り引きが損なわれてしまう。

そこで、育種会社は、中国の生産・輸出会社がカーネーション切花を日本へ輸出する際にこれらの育種会社がそれぞれ発行する輸出許可証(Export Approval Certificate;略称 EAC)を添付する仕組みを考案し、制度化した。


種苗法改正 加工品も育成者権 海外の無断栽培に対抗

農水省は2005年2月18日、種苗法改正案を国会に提出した。2005年4月13日、参院本会議で種苗法の改正案が全会一致で可決した。

この改正案は、新品種の育成者権を守るための権利の範囲を加工品にまで広げ、権利の存続期間を延長することなどを柱としている。

これまで生産、販売、輸出入にかかわる育成者権は、開発した種苗や収穫物にのみ効力が及んでいた。今後はそれらを原材料とする加工品にまで範囲を広げる。背景には、国内で登録されたアズキやイ草の新品種が、海外で無断で栽培され、あんやゴザなど加工品として輸入されている現状がある。

これに対応するため、疑いのある品目は税関でDNA検査を実施し、違法な加工品を水際で食い止めようというのが主な目的だ。しかし原材料の占める割合などにより、どこまでDNA判定できるかについては問題も残っている。

育成者権の存続期間の延長については、欧州連合(EU)などの世界水準に合わせる形での改正となった。果樹などの永年生植物については25年から30年に、その他については20年から25年に延長される。