【植物新品種に関する法と権利】


知的財産権

知的財産権とは、物品に対し個別に認められる所有権(財産権)のことではなく、無形のもの、特に思索による成果・業績を認めその表現や技術などの功績と権益を保証するために与えられる財産権のことである。

知的財産基本法(平成14年法律第122号)において「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

育成者権

育成者権とは、植物品種の知的財産権のことである。

植物の新品種の創作に対する保護を定めた法律である種苗法によって、登録品種等を業として利用する権利(育成者権)を専有する旨(種苗法第20条第1項)が定められている。

つまり、育成者権者は登録品種等を利用する権限を専有できることとなり、第三者は育成者権者の許諾を得なければ登録品種を業として利用することはできない。


種苗法

種苗法とは、植物の新品種の創作に対する保護を定めた法律であり、植物の新たな品種(花や農産物等)の創作をした者は、その新品種を登録することで、植物の新品種を育成する権利(育成者権)を占有することができる旨が定められている。

第一条 : この法律は、新品種の保護のための品種登録に関する制度、指定種苗の表示に関する規制等について定めることにより、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的とする。

種苗法:総務省法令データ提供システム

UPOV条約(植物新品種保護国際条約:The International Union for the Protection of New Varieties of Plants)を踏まえて、種苗法は1998年12月24日に新種苗法が施行され,2003年7月に改正された。

種苗法に違反した場合、「個人は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金」という罰則が科せられる。

登録された植物の新品種は、品種登録の日から25年(樹木30年)保護される。(種苗法改正前は、植物20年、樹木25年)

登録要件

保護を受けるためには、次の要件が必要となる。

・区別性・・・重要な形質において既存品種と明確に区別できること
・均一性・・・同一世代での形質が十分均一性を持っていること
・安定性・・・繰り返しの増殖後も形質が安定していること
・未譲渡性・・・出願前に譲渡されていないこと
・名称の適切性・・・誤認、混同しない名称であること

既に登録されている品種を利用して、従属品種(枝変わりなどの突然変異、遺伝子組替えのように、わずかな形質を変化させて育成した新品種)を育成・登録するには、元の品種の育成者の許諾を得る必要がある。

※ 品種の出願料は47,200円。登録料は毎年支払う必要がある。(登録料 : 1〜3年:6,000円。4〜6年:9,000円。7〜9年:18,000円。10〜30年:36,000円) 出願日から品種登録される日まで、約3〜4年かかる。


・種苗法と商標法

種苗法と商標法はそれぞれ登録制度を有しており、種苗法では人為的変異又は自然的変異に係る特性を固定し又は検定した品種について品種登録が可能とされる。

これに対して商標法では、種子類、苗、野菜、果物、農産物の輸送 苗の仕立てなどの商品、役務について商標登録が可能となっている。法律上、権利の内容(客体)が異なるものの、名称部分で互いに他方の登録との重複した登録をさせないようになっている。

参考:

農林水産省 : 植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する検討会