「遺伝子組み換え技術」



遺伝子組み換え技術とは


1980年代後半から新しい育種技術としておおいに期待されたのが、遺伝子組み換え技術である。

この技術が期待された大きな理由は、目的の形質に関する遺伝子のみを導入できること、生物の種の壁を超えて遺伝子を導入できることにある。その意味で遺伝子組み換えは「究極の育種技術」と考えられ、実用化に向けた研究が急速に進められた。その結果、すでに商品化された遺伝子組み換え作物が世界各地で栽培されるようになった。同時に、この急速な遺伝子組み換え作物の普及に対しては、環境への影響などの社会的な懸念も生まれている。

1953年、すべての生命活動の設計図である遺伝子の本体DNAの2重らせん構造がワトソンとクリックによって明らかにされた。その後、DNAを修復する合成酵素の発見(1967年)、DNAを切断する制限酵素の発見(1971年)によって遺伝子組み換えが現実のものとなり、大腸菌にヒトのインスリンをつくらせることもできるようになった。

高等植物への遺伝子組み換えが世界ではじめて報告されたのは、1983年、タバコによる研究であった。


バイオテクノロジーを用いる利点


意図的な品種改良が可能

バイオテクノロジーを用いた品種改良の最大の利点は、自然交配のように偶発性に任せるのではなく、目的とする有用な形質だけを導入できることです。

均質な種苗を生産できる

 性質がまったく同じ種苗が生産できる点。種は交配によって作られるため、父親と母親の形質が種ごとにバラバラに遺伝する。これは、人間の兄弟が同じ親から生まれても違うのと同様だ。

形質の揃った純系の種苗を作るためには、少なくとも七代以上の特殊な交配を繰り返す必要がある。ところが、組織培養技術を用いた場合には交配を経ないため、性質がまったく同じ苗を大量生産することが可能になる

農業分野では、害虫抵抗性やウィルス抵抗性、除草剤耐性などの性質を持たせた農作物が遺伝子組み換え技術によって開発されています。

異なる種での交配が可能

遺伝子組み換え技術を利用して品種改良を行うことで従来と画期的に変化した点は、異なる種の遺伝資源を利用できることです。このため、種にとらわれることなく、有用な遺伝子を幅広い生物の中から選んで利用することができるため、品種改良の可能性が大きく広がります。

無病苗が生産できる

 栄養繁殖によって苗が作られる植物では、一度ウィルスに罹ると、その子孫まで病気が伝わり、商品価値が激減する。今のところ理由は不明だが、成長点だけはウィルスが進入できない。そのため成長点を培養した苗は、発育の旺盛な無病苗となり、商品価値が高い。