「細胞融合技術」



細胞融合技術とは

1970年、Powerらの研究グループによって、近接するプロトプラストが合体して一個の細胞になることが発見された。

これは、もともと細胞壁のない動物細胞では古くから知られていた現象であり、細胞融合と呼んでいた。動物におけるこの分野の研究蓄積を生かして植物に適用し、ポリエチレングリコール(PEG)という界面活性剤を用いると融合効率が高まることが見いだされた。そして、プロトプラストにすれば、植物の種類に関係なく、どんな細胞とでも細胞融合させることができると発見された。

1978年には、ドイツのマックスプランク研究所のメルヒャーズ博士がジャガイモ(Potato)とトマト(Tomato)のプロトプラストをPEGを用いて融合させ、融合細胞を分裂させて、植物体「ポマト」(Pomato)を育成した。

その後、世界中で多くの細胞融合実験が進められ、タバコ、ジャガイモ、ニンジン、ペチュニア、レタス、イネなどを中心に70種を超える細胞融合による雑種個体(体細胞雑種)が育成されている。また、融合方法についても電気刺激によって物理的に融合させる電気融合法が開発され、この分野の進展には目をみはるものがあった。


日本は活発に細胞融合実験に取り組んだ国の1つである、おおくの体細胞雑種が育成された。

オレタチ (オレンジ+カラタチ、1985)

バイオハクラン (レッドキャベツ+ハクサイ、1986)

ヒネ (ヒエ+イネ、1986)

メロチャ (メロン+カボチャ、1989)

トマピーノ (トマト+ペピーノ、1989)

山形みどり (山形青菜+ハクサイ、2003)


※縁の遠すぎる細胞融合個体は植物体として維持することが困難であり、ポマト、トマピーノ、ヒネ、メロチャは細胞融合植物の実用化の難しさを示す事例となっている。