「胚培養、胚珠培養、子房培養」



・植物の育種技術

育種の出発点は現在でも、交雑によって両親の雑種をつくり、変異の幅を広げることである。そのため、交雑によって雑種胚を獲得し、それを上手に育てることが重要になる。ところが、両親の組み合わせによっては雑種胚が正常に発育しない場合も多い。特に、栽培種と野生種との交雑や種間・属間の交雑では、こういった現象(交雑不和合性)が起こりやすい。種の独自性を保つためだといえる。

そこで、雑種胚だけを切り離して育てることで植物体をつくり出そうとする試みが行われるようになった。これが「胚培養」であり、すでに100種を超える植物での成功例が報告されている。

さらに、雑種胚の摘出が困難な場合に、雑種胚を含む胚珠を取り出して育てる「胚珠培養」、雑種胚を含む子房組織を直接培養して中にある雑種胚を育てる「子房培養技術」も開発され、雑種胚培養技術の適用範囲が広がっている。

日本では、1959年のハクラン(キャベツ+ハクサイ)の成功以来、多くの実験が重ねられ、新品種が相次いで生まれ、商品化された。


・初期の新品種


                                

パシフィックハイブリッド(カノコユリ+サクユリ、1966)            清見(温州ミカン+オレンジ、1979)


                          

千宝菜(コマツナ+キャベツ、1987)                   ロートホルン(テッポウユリ+スカシユリ、1988)