「大量増殖技術」
・大量増殖技術の現状
大量増殖技術は花きを中心に急速に実用化が進んでいる。
日本での大量増殖技術の実用化は1970年頃からはじまり、その先駆けとなったシンビジウムやデンドロビウム、バンダ、ファレノプシスなどで次々に培養法が開発され、当初は大変困難とされていたカトレアや東洋ランなどの増殖にも活用されるようになった。さらに、カーネーションやキク、カスミソウ、スターチスなどをはじめとして、ガーベラやアルストロメリアなどの新しい花きでも組織培養苗が広く用いられている。
草木植物に比べて培養系の確立が難しいとされていた木本植物での利用も進み、西洋シャクナゲでは、組織培養で大量増殖した幼植物体を利用した大規模な苗生産も行われている。
野菜などの他の作物はまだ実験系での利用段階といえる。メロン、アサツキ、ラッキョウ、ユリなどで行われているものの、実用化には至っていない。今後、実生苗に比べてコストをいかに下げられるかにかかってくるだろう。
植物バイテクによる大量増殖技術は、大きく2つに分けられる。
1.茎頂を培養部位として、茎頂のもつ活発な再生能力を活用する方法
2.培養部位にはこだわらず、幅広い培養部位から誘導した不定芽や不定胚を活用する方法
植物バイテクで植物体・種苗の大量増殖や改良を行う上で、基本となる技術は以下の4つにまとめることができる。
・茎頂伸長 − 茎頂(分裂組織)を用い、そのまま伸長させて個体を再生すること。
・胚発育 − 胚を用い、そのまま発育させて個体を再生すること。(胚は植物体上でそのまま発育を全うすると種子になる。)
・器官形成 − 組織・細胞培養によって、本来なら発生するはずのない部位から芽や根を人為的に誘導させること。
・不定胚形成 − 組織・細胞培養によって、外植体から生じたカルスや外植体そのものの細胞から、胚と類似した球状からハート型の
二極性をもつ胚を誘導し、植物体を再生させること。