時間が掛かる
新しい市場を切り開き、事業を軌道に乗せることはどの業界でも一朝一夕には実現できない。そして、
参入先がバイオ市場ならさらに長い時間を覚悟しなければならない。なぜなら医薬品や医療機器の開
発には、十数年もの時間が必要となるからである。それは製品そのものの開発だけでなく、安全性や有
効性を実証するための評価試験を段階ごとに行う必要があるためである。さらに製品化に成功した後も
ユーザーに受け入れてもらうまでに時間が掛かってしまう。研究者は保守的で、誰の論文でも利用された
ことのない製品には手を出したがらないからである。また発売後も市場に受け入れられるまで、地道に説
明と売り込みを繰り返さねばならない。こうして毎年研究開発に費用ばかりかかり、売上が出るのが相当
先となると企業の経営陣はうんざりしてしまうだろう。場合によっては事業をバイオ事業から手を引いてしま
うこともあるようだ。
早稲田大学ビジネススクールの大江建教授はバイオ事業を成功させるためには、事業を長い目でみる
必要があるという。特にIT事業を手がけている企業などがバイオに参入するときには、時間の感覚に気を
つけることが重要だと語る。バイオ市場はIT市場などに比べると時間の流れが遅いため、アクションを起こす
べきタイミングも違ってくる、ということだ。教授は異業種参入の企業がバイオ市場で成功する鍵は「失敗を
恐れないこと、時間の流れに気をつけること」と語る。