第一の壁:市場が無い
日経BP社の調査によると、2004年のバイオ国内市場規模は前年比5,2%増しの1兆7470億円になる。
しかし個別の事業別で見れば、大きいと言われる対外診断薬部門でも3800億円程度にすぎない。大手企業
が本気を出して取り組むには、あまりにも小さな市場である。それでも、数年後には巨大市場を形成すると言う期
待感から多くの企業が参入してきたが、現時点において市場は企業の予測ほど成長をしていない。
市場が無いと言う状況を逆手に取り、利益を上げている企業もある。その例として82年に米のバイオベンチャー
「Amgen」と合併会社を設立し、医薬品事業を立ち上げたキリンビールが挙げられる。キリンビールは当時多くの企
業(Amgen含む)が研究開発を進めていたインターフェロンアルファという物質についての研究は行わず、製薬業界
がほとんど興味を持っていなかったEPO(造血作用を持つホルモン)という物質の研究開発を行った。まだ成長が未
熟な産業においては既存の市場で争うよりも、潜在需要を掘り起こして新たな市場を開くほうがリスクが少ないと判
断したのだ。この予測は見事に的中し、EPOは全世界で1兆円を超えるバイオ医薬品へと成長したのである。